共生観について考える |
「共生」とは
これまでにも「共生」に関する書物が数多く公表されている。しかし,中には「共生」と「共存」の混同,「搾取」を意味するもの,「共生」とはほど遠いものなどが,「共生」という概念で安易に用いられており,大きな問題がある。筆者は,共生とは「お互いの犠牲の上に成り立った関係であるが,生まれも育ちも違ったものがともに協力し合って,相互が利益を得られるような関係」,すなわち「犠牲を伴う双利関係」と考える。
これまでの筆者らのVA菌根菌についての調査において,本菌は宿主である植物の養水分吸収などを促進させ,植物の生育を助ける見返りとして,光合成産物を得るが,一定乾物量当たりの光合成産物含量は無感染樹と比べて差異が認められなかった。なお,感染樹では生育が旺盛になったことにより,1樹当たりの光合成産物含量は無感染樹と比べて著しく増加した。しかし,本菌は胞子形成時に宿主の根の一部を破壊することを認めている(参照)。
このように,「共生」という観念は,持ちつ持たれつの関係の中に潜在する「お互いを理解し合った負担」の上に成り立った概念を意味していると定義できる。
食育(食農)教育
1) 京都府立大学ACTR主催(平成16年度「地域に根する研究」府民シンポジウム)
「食」と「農」の力 −心の教育の推進と農業への理解を目指して−
共生観に基づいた今後の教育
共生観に基づいた主な指導方法として,以下のことが考えられる。
(1) 自然に学ぶ
栽培学習を通して,生徒だけでなく教師も自然の営み(共生,競争など)を学び,心の育成を図る。そのためには,自然の営みの一つである「共生」を学ぶことのできる共生微生物を利用した栽培学習の展開が望まれる。
(2) 生産性の持続可能な共生社会
資源の枯渇,環境破壊などがさらに深刻化する21世紀に向けて,生態系の維持,資源の有効利用など,生産性の持続可能な開発を実現する方法を考えねばならない。つまり,このことは人類が人類を取り巻く自然と如何に共生しなければならないかを問われているといえるだろう。
(3) 共生観を活かした指導
「お互いが協力し合う」は生徒指導上において非常に重要な課題である。技術科においても作業などにおいて生徒たちがお互いに助け合う授業環境づくりは非常に大切なことである。
最近,「共生」という概念が注目されているのは,競争社会の見直しに対する時代の要請が根底に流れているように考えられる。受験競争にさらされている生徒に対して,共生観に基づいた指導は生徒の健全な心の発達に大いに役立つものと考える。
(石井孝昭.1996.共生観に基づいた今後の教育のあり方. 日本産業技術教育学会第39回全国大会講演要旨集. p20. より抜粋)
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